いつかうねめ牛を松坂牛や米沢牛のようなブランドに。
父と競い腕を磨く若手肥育農家の挑戦

有限会社 武田ファーム
武田 侑也 さん

 

郡山が全国に誇る銘柄牛「うねめ牛」。生後約10ヶ月で買ってきた子牛を市内で約20ヶ月にわたり育て、肉質等級「4」以上を獲得した牛の中から、さらに質・グレードが優れているものだけにその名が与えられ、飲食店や小売店へと流通されます。繊細な肉質が特徴で、しっかりとした食感がありつつ脂の重さを感じない、柔らかくなめらかな口当たりの牛肉です。松坂牛や米沢牛といった全国的に有名なブランド牛と同じく、前提は雌牛であること。郡山の豊かな自然のもと愛情たっぷりに育てられた牛の中からさらに選び抜かれた、まさにお姫様のような牛たちなのです。

肉牛に関わる農家は、子牛を生ませて10ヶ月ほど育てる「繁殖農家」と、その子牛を買って肉牛に育て上げる「肥育農家」の2つに分けられます。今回お邪魔した武田ファームは肥育農家。郡山市阿久津町の山あいに2棟の大規模な牛舎を持ち、これまで「全農肉牛枝肉共励会」で3度、「最優秀賞」を獲得しています。

市内でうねめ牛を手がける肥育農家は武田さんを含め現在6軒。野菜農家やコメ農家と同じく肉牛の世界も後継者不足が大きな問題となっていますが、ここでは今、うねめ牛の品質向上と認知拡大に長く取り組んできた2代目、武田晃一さんに息子の侑也さんも加わり、約200頭の牛を育てています。今回はその侑也さんに、うねめ牛にかける想いや夢をうかがいました。

 
 

毎日同じことの繰り返し。「俺は何をしているんだろう」

 

 

侑也さんが家業に入ったのは20歳の頃。市内の高校を卒業後、東京の美容専門学校を経て郡山に戻りましたが、始めは家を継ぐ気などまったくなかったそうです。

 

「子供の頃から牛は身近でしたし、牛用の藁にまみれて遊んだりしていましたけど、仕事として興味を持ったことはなかったです。中学生の頃には何度か手伝いをした記憶もありますけど、大変さばかり目についてしまって。この仕事を始める時も、暇を持て余すぐらいならとりあえず自分の家で働いてみっか、程度の気持ちで入ったんです。父も“ああ、やるのか”ぐらいの感じでしたね。」

 

傍らで聞いていた父親の晃一さんがこう話を継ぎます。

 

「長男だから必ず継がなきゃいけないという考えもなかったし、家業に縛りつける気もなかったので、いつやめてもいいよという気持ちでした。ただ、ゆくゆくはうちも人を雇わないといけないとは思っていたので、それなら従業員として働いてみないか、というスタンスで入ってもらったんです。」

 

しかし、実際の仕事はそう甘くはなかったと侑也さんは振り返ります。

 

「体力が必要な仕事なので、体ができていなかった始めの頃はかなりキツく感じましたね。それと、来る日も来る日も朝晩の餌やりと餌作りの繰り返しで、そのうち“俺は毎日何をしてるんだろう”と思うようにもなりました。実家ということもあって甘えも出て、父から“辞めろ”と言われたこともありました。」

 
 

初めて自分で仕入れた牛を送り出した時は泣きました

 

 

そうした意識を変えるきっかけとなったのは、晃一さんが手がけた牛が全国や県の和牛枝肉共励会で高い評価を受け、大きな賞を受賞する姿を目の当たりにしたことでした。中でも2013年、晃一さんが日本トップレベルの共励会で3度目の最優秀賞を獲得したのは、侑也さんがこの道に進んでまだ間もない頃のことでした。

 

「当時の自分にできることはほんのわずかでしたけど、それでも実際に自分が触れ合った牛が大きな共励会に出て良い成績を取るのは、やっぱりうれしかったですね。そこで初めて、うちの仕事は日本一を目指せるようなすごい仕事なんだと気づきました。」

 

武田ファームでは毎月10頭ほどの牛が競りに出され、同時に次の10頭の子牛を仕入れる、その繰り返しにより肥育を続けています。経験を積み、少しずつ晃一さんの技術を吸収した侑也さん。最近では、仕入れる子牛も吟味できるようになってきたと感じています。

 

「肩つきや重量、血統などをもとに見極めながら、最終的には値段との兼ね合いで仕入れる牛を決めます。高価な買い物になるので、簡単に“この子は失敗だった”というわけにいきません。そこはやはり、経験の積み重ねでしか磨けないのかなと思います。

最初に自分で仕入れた牛を出荷した時には泣きましたね。どうしても情は移りますし、手がかかった子ほど出荷の時には少し寂しくなります。さすがに最近はもう涙は出ないですけど、“いい肉になれよ”みたいな気持ちで送り出しています。」

 
 

我々には、みなさんにおいしく食べてもらう責任がある

 

 

共励会でたびたび優秀な成績を収める武田さんの牛。質の高い牛が育つ理由は仕入れの力だけではなく、20ヶ月におよぶ肥育期間中のこだわりにもあります。

 

「育て方で他の肥育農家さんと一番違うのは餌でしょうね。今は既成の餌を使う農家がほとんどですが、うちでは麦をメインに、トウモロコシ、大豆、ふすま(小麦の皮)、ビールかすなど、人も食べられるようなものばかり11種類の材料を、自分のところでこだわってブレンドしています。うちの仕事で一番手間のかかる作業かもしれないですけど、一番大事にすべきところだとも思っています。

もう一つ大事にしているのは、観察です。我々の商売は命を育む商売であって、この牛舎の中で死んでしまったらやっぱりかわいそうだし、ちゃんと肉になるまで育て上げて、みなさんにおいしく食べていただく責任があります。そのためにも、餌をちゃんと食べているか、風邪で鼻水を垂らしていないかなど、牛の毎日の調子を見てあげることは非常に大事なことです。」

 
 

最近は父との競争意識も芽生えてきました

 

父・晃一さん(右)、いとこの昌樹さん(左)と

 

和牛の最高等級を表す指標としてよく知られる“A5ランク”という言葉。実は、A5ランクはその中でさらに評価が<8>から<12>まで5段階に分かれています。2020年1月に行われた福島県の「JA福島さくら肉牛枝肉共励会」では、武田ファームの牛が最優秀賞、優秀賞、優良賞の上位3賞を独占。これは何十年という武田ファームの歴史の中でも初めての快挙だといいます。しかも、その3頭すべてがA5の中でも最高峰となる<12>の評価を獲得しました。晃一さんはもちろん、侑也さんが積み上げてきた経験と努力も、着実に実を結び始めています。

 

「受賞した3頭のうち優秀賞と優良賞の2頭は自分が手がけた牛です。やっぱり、賞をもらえるとやりがいにつながるし、モチベーションが上がります。

でも、最優秀賞は父でしたからね。そういう意味では、父との競争意識も最近は芽生えてきました。最終的には同じところに立てるように、そして超せるようにやっていかないといけないと思っています。」

 

今やうねめ牛の未来を担う存在となった侑也さん。そんな彼がいま目指すのは、うねめ牛を通した地元郡山への貢献です。

 

「いつか、うねめ牛というブランドを松坂牛や米沢牛のような大きいブランドと肩を並べるような存在にできればいいですね。そうすれば郡山の名前も全国に知れ渡るし、牛の値段も上がって“俺もやってみよう”という若い人も出てくると思うんです。うち一軒だけが頑張ってもブランドは成立しませんから、仲間を増やしてうねめ牛の輪を大きくしたい。そうすることで少しずつでも郡山の力になっていけたらと思います。」

 
 

 
 

 

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有限会社 武田ファーム

福島県郡山市阿久津町字南小415番地

TEL: 024-943-6076 / 090-8921-0607

FAX: 024-943-6742

 

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<武田さんのうねめ牛が買える場所>

※仕入れがない場合もありますので事前にご確認ください

■浅源精肉店

福島県郡山市大町1-12-3

024-922-0629

 

■肉のニッタ

福島県郡山市虎丸町9-10

024-922-7689

https://n-katuo.wixsite.com/mysite

 

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<武田さんのうねめ牛が食べられる店>

※仕入れがない場合もありますので事前にご確認ください

■鉄板焼 川前

福島県郡山市大町1-6-13-1F

024-983-8680

 

■京香

福島県郡山市長者1-3-20

024-932-0220

http://www.kyo-ka.jp/

 

■炭火焼 牛門

福島県郡山市虎丸町14-22

024-935-5519

 

■角さん

福島県郡山市駅前2丁目8-16

024-924-0254

http://www.oryouri-kakusan.com/index.html/

 

■もうもう亭

福島県郡山市朝日3-6-3 レジデンス朝日1F

024-923-9437

http://www.moumoutei.com/

 

■そもさん亭

福島県郡山市駅前1-5-3 湖月ビル1F

024-938-6321

 

■黒毛和牛 縁

福島県須賀川市宮先町57 GAINビル2F

0248-94-4807

 

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2020 . 2 . 19

Photo by : 佐久間正人(佐久間正人写真事務所)
Interview / Text by : 髙橋晃浩 (Madenial Inc.)

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